PROFILE

米澤 好史様

 

和歌山大学 教育学部 教授
臨床発達心理士、学校心理士スーパーバイザー、上級教育カウンセラー、ガイダンスカウンセラー
専門は 実践教育心理学、臨床発達心理学
専門家が極めて少ないといわれる「愛着障害」の専門家としてご活躍

※米澤様に関する詳細は、最後をご覧ください。

 

 

根岸 葉槻(以下、根岸)
「長年、愛着問題の研究でご活躍されてきた米澤様ですが、
そもそもこの分野の研究に携わろうと思ったきっかけがあれば教えてください。」

 

米澤 好史様(以下、米澤)
「私は、最初から愛着問題の研究をしようと活動していたわけではないんです。
約30年前に、和歌山県にある6つの児童養護施設の調査を依頼されました。
そこはいわゆる、生まれた家庭で生活していくことが難しいとされるこどもたちがいる場所でした。
実はその中に、施設で育った子特有の特徴を抱えているこどもたちがいました。
今振り返ると、愛着問題を抱えていたのだと思います。
ただ当時は愛着問題という概念もなく、そのような方をホスピタリズムという言葉で呼んでいる時代でしたので、施設で育つこどもだけが持つ特徴があるという当時の定説に、私自身も何の疑問も抱きませんでした。
そこから10年近く、愛着問題の知識がない中でこどもたちの研究に携わっていました。」

 

根岸
「そうだったんですね。ですがそのような中で、どうして愛着に目を向けようと思ったのですか?」

 

米澤
「その後、発達障害という概念が世の中に広まっていき、私もこども支援の専門家として、保育所や学校でアドバイスをしたり、一緒に関わることが増えていきました。
そのような中、2000年を超えた辺りから、発達障害という言葉だけでは説明できないことが多々あると思い始めました。

そこで、10年以上前に出会っていた児童養護施設のこどもたちのことを思い出したんですね。
まさに児童養護施設で出会った子と同じ行動をするこどもたちがおり、その時に、これはもしかしたら愛着の問題からきているのではないかと考えました。」

 

根岸
「米澤様が、現場で実際に抱いた疑問から、愛着研究が始まったということですね。」

 

米澤
「そうです。ですので最初は、手探り状態でしたし、愛着関係を余計に悪くしてしまったという失敗も多々ありました。

ただ今となっては、この順番で良かったと思っています。
実際に自分が目で見て、感じたからこそ、そこで使えるアプローチ方法を提案できていますし、本当の愛着問題を見つけることにもつながったと考えています。

これは今でもそうですが、私は愛着の研究をするために愛着問題の支援をしているわけではなく、現場で起こっている問題があるからこそ、支援をしていきたいと活動しています。」

 

根岸
「30年以上、愛着の問題に向き合ってこられたとのことですが、一般社会においての認知度はどう感じていらっしゃいますか?」

 

米澤
「愛着問題という言葉すら、知らない方が多いのが現実ではないですかね。
ただ20年、30年前に比べたら、愛着という言葉を出す方が増えてきたとは感じていますので、今後、もっと浸透していくことを期待しています。」

 

根岸
「ここ最近はコロナウイルスの影響を受け、家族で過ごす時間が長くなっているかと思います。
そのような中で、米澤様が懸念される問題などがあれば教えてください。」

 

米澤
安心、安全が脅かされ、ストレスが今までよりも溜まりやすい状態になっていることは確かだと思います。
そしてそのストレスが、身近な人に当たりやすくもなっていると見ています。

 

根岸
「そのような状態の中、家族間で起こりやすい問題などがあれば教えてください。」

 

米澤
「愛着障害の行動の1つに、優位性の渇望というものがあります。
自分が不安だからこそ、他人を非難することで、自分の立場を守ろうとする行為です。

例えばですが、親がこどもに『勉強しなさい』と言ったとしますよね。
親からすると、こどものためを思い、またそれが正義だと思ってやっているつもりが、実はこどもに不安をぶつけているだけということが多々あります。
そうすると、こどもからしたら面白くないので、反論するという負のループに入っていきます。
今はそのような事が、いつも以上に起こりやすい状態なのではないかと思っています。
ただ私は、この状態はある意味でチャンスなのではないかと見ています。」

 

根岸
「チャンスとは、どういう意味でしょうか?」

 

米澤
自分が本当に不安な時、『守ってくれる場』というのが必要になってきます。
今は、それがあるかどうかを確認できる時でもあり、またそれを築いていける時なのではないかと思っています。
そういう意味でのチャンスですね。」

 

根岸
「ではここからは質問が変わりますが、私はこの活動を通して、愛着問題に苦しむこどもたちにも情報を発信していきたいと思っています。
仮に、安全を確保できる場がないと感じる子がいたとしたら、今すぐに、そして自分でもできることがあれば教えてください。」

 

米澤
そのようなこどもたちにまず伝えたいことは、『自分だけで解決しようと思う必要はなく、人に頼って欲しい』ということです。
ただその際、誰でもいいわけではなく、安心安全が確保できる人を見つけるということが大切になります。
要は、安心安全を感じられる“キーパーソン”を見つけるということです。

実は私自身ここまで、キーパーソンとなる方をつくりたいと活動してきました。
例え、親との愛着関係を上手く構築できなかったとしても、キーパーソンとなってくれる人がいたら、こどもたちも安心して過ごせるのではないかと考えてきたためです。
ですのでこれまでは、特にこどもたちと関わることが多い先生方や、地域のコミュニティなどに積極的に働きかけてきました。」

 

根岸
「これまでは、そのような概念自体がなかったということですか?」

 

米澤
「なかったというよりは、これまで愛着は家庭の問題であり、自分は入ってはいけないと、自ら身を引いている方が多かったと言えます。
これは、とても残念なことだと思っています。

ただ最近では、私の考えを理解し、キーパーソン的な存在としてこどもたちに関わってくださる方が増えてきました。
また実際に、そのように関わられた方からは、私にもこんな力があったんだと喜んでくださる方が多いです。」

 

根岸
「こどもだけでなく、キーパーソンとなる大人側も嬉しい気持ちになる。
双方にとって良いことがある、素晴らしい取り組みですね。」

 

米澤
「関わる側の価値や、存在を高めることができるので、その人の成長にも繋がると思っています。
またキーパーソンになる上で、誤解しないでほしいことがあります。
それは、キーパーソンになる人は、1人のこどもしか見ることができないというわけではないということです。
何人でも可能ですし、その輪は無限に広げていけると思っています。」

 

根岸
「ここまで第一線で愛着問題を研究されてきた米澤様ですが、
その中で『最高の1日』を挙げるとしたら、どの日を選ばれますか?」

 

米澤
「その質問は難しいですね。
私にとっては、毎日が最高と言えます。
これまでたくさんの方に出会ってきましたが、私にとってその方との出会いが何よりもの財産だからです。」

 

根岸
「素敵なご回答をありがとうございます。
では最後に、米澤様の今後の夢を教えてください。」

 

米澤
“愛着”は全ての人が通る道で、誰にとっても大切なものだからこそ、皆さんの生活の中に愛着という言葉が定着し、もっと日常の中で普通に語られるようになってくれたらと願っています。

愛着問題と聞くと、世間一般ではマイナスの問題として認識されていることが多いですよね。
けれど私は、決してマイナスの問題などではないと思っています。」

 

根岸
「実は私も、これまで愛着問題はマイナスの問題として捉えてきたのですが、そうではないということですね。
その点に関して、もう少し詳しくお聞きしてもよろしいですか?」

 

米澤
私は、愛着は『誰もが通る資産』だと思っています。
仮に愛着問題を抱えてしまったとしても、それは愛着を築いていく上で、たまたま最初に躓いてしまったというだけであり、そこから必ず立ち上がることはできますし、その経験があるからこそ、自分にとって心地いい愛着に気が付くチャンスでもあると考えています。
だからこそ、愛着という言葉を当たり前のこととして捉えられる世の中をつくっていきたいです。」

 

 

≪ 米澤 好史様について ≫

 

米澤 好史様

http://wakarid.center.wakayama-u.ac.jp/ProfileRefMain_2307.html
(国立大学法人 和歌山大学)

 

略歴

◆研究経歴

1982- 1984   京都大学文学部哲学科心理学専攻
1982-   認知心理学・言語心理学・思考心理学・記憶心理学
1984- 1986   京都大学大学院文学研究科修士課程心理学専攻
1986- 1988   京都大学大学院文学研究科博士後期課程心理学専攻
1988-   学習心理学・教育心理学・・児童心理学・青年心理学
1991-   こども理解・・学校心理学・学習指導・学習支援・生徒指導論・人間関係論
1993-   発達支援・子育て支援・臨床発達心理学・自己心理学・自己理解支援・感情心理学
1999-   学校心理士(登録番号99300)
2003-   臨床発達心理士(登録番号00619)
2004-   上級教育カウンセラー(登録番号3065002)
2010-   臨床発達心理士スーパーバイザー(登録番号 00619-049)
2011-   ガイダンスカウンセラー(認定番号1104047)
2012-   学校心理士スーパーバイザー(登録番号 SV0029)

◆研究職歴

1988- 1992   和歌山大学教育学部 助手
1992- 1995   和歌山大学教育学部 専任講師
1995- 2004   和歌山大学教育学部 助教授
2004-   和歌山大学教育学部 教授

 

教育に関する受賞歴

*グッドレクチャー賞 和歌山大学 (2008)


著書

*行動科学への招待―現代心理学のアプローチ
福村出版; 改訂版 2012年1月

*発達障害・愛着障害 現場で正しくこどもを理解し、こどもに合った支援をする『「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム』
福村出版 2015年10月

*やさしくわかる! 愛着障害―理解を深め、支援の基本を押さえる
ほんの森出版 2018年7月

*愛着関係の発達の理論と支援 (シリーズ支援のための発達心理学)
金子書房 2019年3月

*愛着障害・愛着の問題を抱えるこどもをどう理解し、どう支援するか? アセスメントと具体的支援のポイント51
福村出版 2019年8月

上記の書籍に関しては、こちらをご覧ください▼
https://www.amazon.co.jp/%E6%9C%AC-%E7%B1%B3%E6%BE%A4%E5%A5%BD%E5%8F%B2/s?i=stripbooks&rh=n%3A465392%2Cp_27%3A%E7%B1%B3%E6%BE%A4%E5%A5%BD%E5%8F%B2&s=date-asc-rank&qid=1589657990&ref=sr_st_date-asc-rank

 

公開講座・講演会実績

*一般財団法人京都社会福祉会 ぱあとなあ京都 中部B・Cブロック合同後期研修 2020 .02 詳細
*和泉市教育員会こども部こども未来室 職員研修会 2020 .02 詳細
*新宮・東牟婁圏域自立支援協議会子ども部会研修会 2020 .02 詳細
*塩尻市教育委員会 令和元年度元気っ子研修会 2020 .02 詳細
*北河内ブロック障害者福祉研究会 研修会 2020 .02 詳細
*堺市教育委員会事務局教育センター 令和元年度教職員教育研究講演会(中学校特別支援教育) 2020 .02 詳細
*特定非営利活動法人きのくに子どもNPO 令和元年度和歌山市ファミリー・サポート・センター事業にかかる講習会 2020 .02 詳細
*令和元年度岐阜県里親研修会 2020 .02 詳細
*高石市 青少年健全育成推進事業学校問題研修会 2020 .02 詳細
*令和元年度泉大津市小中学校生徒指導研修会 2020 .02 詳細
*福井市社中学校 2020 .02 詳細
*宝塚市子ども未来部子ども育成室 2020 .02 詳細
*摂津市教育委員会 就学前教育研修会 2020 .02 詳細
*尼崎市教育委員会事務局学校教育部 児童生徒理解のための研修会 2020 .02 詳細
*摂津市教育センター 研修会の講師 2020 .02 詳細
*摂津市立千里丘小学校 教授 2020 .02 詳細
*ジャパンライム株式会社 セミナー 2020 .01 詳細
*ジャパンライム株式会社 セミナー 2020 .01 詳細
*令和元年度第51回奈良県立特別支援教育研究大会 2020 .01 詳細
*講師派遣依頼 2020 .01 詳細
*八尾市人権教育研究会 2020 .01 詳細
*大阪府立生野聴覚支援学校 令和元年度 校内人権研修会 2020 .01 詳細
*摂津市立味生小学校 2020 .01 詳細
*伊丹市 平成31年度(2019年度)第2回トワイライト研修会 2020 .01 詳細
*大東市 保育研修会 2020 .01 詳細
*徳島県立総合教育センター平成31年度特別支援教育研修会「愛着の問題を抱える子供の理解と支援について」 2019 .12 詳細
*泉佐野市立さくらこども園保護者向け研修会 2019 .12 詳細
*四国地区児童発達支援部会研修会 2019 .12 詳細

 

メディア出演

*ニュース和歌山こども新聞コラム「親子関係をはぐくむ」 2019
*東京新聞 2019
*ニュース和歌山こども新聞コラム「親子関係をはぐくむ」 2018
*神戸新聞 2018
*毎日新聞 2018
*ニュース和歌山こども新聞コラム「親子関係をはぐくむ」 2017
*ニュース和歌山こども新聞コラム「親子関係をはぐくむ」 2016
*ニュース和歌山こども新聞コラム「親子関係をはぐくむ」 2015
*紀伊民報 2014
*NHK大阪放送局 ニュース 2012
*毎日新聞 和歌山版 2012
*NHK和歌山放送局 明日のWA 2011
*NHK和歌山放送局 防災特集番組 2011
*和歌山放送「にこにこ子育て」 2009
*NHK和歌山放送局「紀の国スペシャル Wakayama Next10 ~和歌山の教育を考える~」 2009
*朝日新聞 和歌山版 残虐な少年事件なぜ頻発-米澤好史・和大教授に聞く- 2008
*和歌山放送番組「ニコニコ子育て」アドバイザー・出演 2008
*和歌山放送番組「ニコニコ子育て」アドバイザー・出演 2007

 

※著書、公開講座・講演会実績、メディア出演・掲載に関しては、一部を抜粋して掲載しております。
更なる詳細を知りたい方は、こちらをご覧ください。

http://wakarid.center.wakayama-u.ac.jp/ProfileRefRes_2307.html#tl
(研究関連情報)

http://wakarid.center.wakayama-u.ac.jp/ProfileRefSoc_2307.html#tl
(社会連携関連情報)

 

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