PROFILE

友田 明美様

 

福井大学 子どものこころの発達研究センター教授
同大学医学部附属病院 子どものこころ診療部で小児科医としてもご活躍
研究テーマとして「児童虐待と脳の発達」などを取り上げ、子どもの発達に関する診療・研究・教育をされている

※友田様に関する詳細は、最後をご覧ください。

 

 

根岸 葉槻(以下、根岸)
「長年、愛着問題の研究でご活躍されてきた友田様ですが、
そもそもこの分野の研究に携わろうと思ったきっかけを教えてください。」

 

友田 明美様(以下、友田)
「私がこの分野に進もうと思ったきっかけは、2つあります。
まず1つ目は、小児発達科医として33年間勤務する中で、子どもの発達に愛着(アタッチメント)が重要ということを常に身近で感じてきたからだと思います。

また2つ目として、43歳の時に米国ハーバード大学に留学したことも大きなきっかけになりました。
そこで、児童虐待が脳に与える影響を研究したのですが、その時に、改めて愛着形成の大切さに気づかされました。」

 

根岸
「突然この分野に進もうと決めたわけではなく、仕事や研究で携わっていく中で、愛着研究に対する想いが強まっていったという感じですね。

ところでこれまで、愛着問題を間近でみてこられたわけですが、愛着問題の認知度に関しては、どのように感じていらっしゃいますか?」

 

友田
「認知はほぼされていない、というのが現状ではないですかね。
アタッチメント形成という研究や、学問は以前からありますが、一般社会ではそれほど認知が進んでいないと感じています。

平成の時代は、発達障害支援法ができたこともあり、発達障害に関しての認知が進んだ時代でした。
そして令和に入り、ようやく愛着やトラウマ(こころの傷)という部分にも注目が寄せられるようになってきました。
ですので、これから認知度が高まっていくのではないかと期待しています。」

 

根岸
「実は私も、世間の認知度は低いのではないかと感じてきました。
この活動を始めてから、愛着問題という言葉を何度も発してきましたが、言葉自体を初めて聞くという方が多い印象を受けてきました。
ですので、今後はもっと世の中全体に浸透してくれたらと願っています。
そのような中、友田様としては今後、愛着問題にどのように関わっていきたいと考えていますか?」

 

友田
これからは『予防の段階で支援をしたい』と考えています。
風邪で考えていただくとイメージしやすいですが、風邪は引いてからでは長引いてしまいますよね。
それと同じように、こころの風邪を引く前に何かできないかと考えています。」

 

根岸
「その点に関して、もう少し詳細に教えていただけますか?」

 

友田
「愛着問題を防ぐためには、当事者だけの問題として捉えてはいけないと考えています。
もちろんSOSを発している養育者や、子どもへの支援は必要ですが、それだけでなく教育機関や、母子保健・児童福祉・精神保健行政、さらには地域全体にも情報を伝え、社会全体で子どもを育てていく仕組みをこれからは創っていかなければいけないと思います。そのために私は、『とも育て(共同子育ての略で、子どもを社会全体で育てていくこと)』を提唱しています。

そもそも私は、『完璧な親、完璧な子育てはない』と考えています。
親も人ですので、こころが折れたり、子どもの前で弱さを出してしまうこともあると思います。
ただそれが、度を超えてしまうと危ないんですね。
また親は躾だと思ってしていることが、実は身体的虐待のような厳しい体罰となってしまっていることが多々あります。
ですので、それに気づかせてあげることも私の役割だと考えています。
その際、診断や治療などは必要なく、寄り添ってあげるだけで充分なんですよね。」

 

根岸
「一般的に虐待や愛着問題は連鎖するといわれますが、その点に関してどのように考えられていますか?」

 

友田
「そうですね。特に、虐待などは連鎖しやすい問題と言われています。
この点において、脳の再形成という視点から見ると、『褒め育て(褒めて育てる)』が非常に重要になってきます。

ただその際、忘れてはいけないのが、養育者も褒めるということです。
現在の親世代は、子どもの頃に褒められた経験が少ない世代でもあり、自分が褒められた経験がないからこそ、褒めるという概念自体があまりないという傾向があります。
ですのでまずは、社会が親を褒めてあげることから始めていくのが鍵になってくると考えています。」

 

根岸
「褒め育てとは素晴らしい考え方ですね。
実際に、友田様も診察に入られる際は、親を褒めるということから始められているのですか?」

 

友田
「はい、私は必ず褒めることから始めています。
親の良いところを言葉にして伝えてあげることで、親自身がころっと変わり、子どもを褒めるようになるということが多々あります。

実は以前、このようなことがありました。
愛着障害を抱えた12歳の男の子が、父親と診療に訪れたのですが、その子はお金を与えても、褒めても、脳に何も響かなかったんですね。
そこでまず、父親のことを褒めてあげたら涙を流されたんです。
これまで父親自身、褒められた経験がなかったために、自分が認められたことで自信がついたんでしょうね。
そして褒められることの嬉しさを知ったことで、そこからわが子を褒めるようになり、7ヶ月後には子どもの脳に大きな変化がありました。
愛着問題もみるみる落ち着いていき、生活自体も安定していきました。
このことからも言えますが、これからは『褒め育ての連鎖』の時代に変えていけたらと思っています。

 

根岸
「ここからは話が少し変わりますが、新型コロナウイルスの影響で社会全体の仕組みが変わろうとしています。
そのような中で、愛着問題において危惧されることがあれば教えてください。」

 

友田
「これまでよりもストレスを感じやすくなっている現在、愛着問題が起こる可能性も非常に高まっているのではないかと見ています。
ただこれまでの研究で、親のストレスを少しでも減らすことで、子どもへのマルトリートメント(不安定な愛着形成)が減ることが分かっています。
親が変われば、子どもも変わる。親の脳を癒やせば、子どもの脳は変わるということです。」

 

根岸
「それでは最後に、友田様の今後の夢を聞かせてください。」

 

友田
マルトリートメントが減って、『親も子どもも楽しく過ごせるような子育てができる世の中をつくりたい』ということです。
そのために、マルトリートメントの予防と、とも育て(共同子育て)の大切さをもっと伝えていきたいです。

 

 

≪ 友田 明美様について ≫

 

友田 明美様

https://tomoda.me/staff/tomoda.html

 

福井大学 子どものこころの発達研究センター 発達支援研究室

https://tomoda.me/

https://researchmap.jp/read0172993

 

略歴

1987年 熊本大学医学部卒業

1992年 熊本大学医学部附属病院発達小児科助手

2003年~2005年 文部科学省在外研究員(米マサチューセッツ州マクリーン病院発達生物学的精神科学研究プログラム), ハーバード大学医学部精神科学教室客員助教授

2006年 熊本大学大学院医学薬学研究部小児発達学分野准教授

2011年 福井大学大子どものこころの発達研究センター教授・副センター長(現職)

同 医学部附属病院子どものこころ診療部長(兼任)

2009~2011年・2017~2019年 日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究

日本側代表

2020年 文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)受賞

 

著書

*癒やされない傷―児童虐待と傷ついていく脳
診断と治療社;新版2011年12月

*子どものPTSD―診断と治療ー(友田明美, 杉山登志郎, 谷池雅子)
診断と治療社 2014年5月

*子どもの脳を傷つける親たち
NHK出版新書 2017年8月

*虐待が脳を変える―脳科学者からのメッセージ(友田明美、藤澤玲子)
新曜社2018年1月

*脳を傷つけない子育て:マンガですっきりわかる
河出書房新社2019年2月

*実は危ない!その育児が子どもの脳を変形させる
PHP研究所2019年6月

*親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる
NHK出版新書2019年11月

 

上記の書籍に関しては、こちらをご覧ください▼
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メディア出演・掲載

*子どもを守ろう 第6部 未来に向けて 傷つく脳深まる孤立
2019年03月 北海道新聞

*体罰禁止 問われるしつけ
2019年03月 熊本日々新聞

*“子育て無免許運転”をなくせ
2019年03月 View point

*消えない傷ー今苦しんでいるあなたへ 友田明美さん「性的虐待で脳が萎縮する」
2019年03月 デジタル毎日新聞

*子の脳傷つきます 親の暴言、夫婦げんか
2019年03月 北陸中日新聞

*法律で体罰禁止54か国 虐待防止に高い効果
2019年02月 毎日新聞

*Healing Wounded Families Akemi Tomoda, Child Neurologist
2019年02月 Professionals – TV – NHK WORLD – English

*親の暴言が子供の脳を傷つける︕夫婦喧嘩以上に気を付けなければいけない事とは︖
2019年01月 BIGLOBEニュース

*be ・フロントランナー2018 ランキング
2019年01月 朝日新聞 be on Saturday

*深読みTV 「プロフェッショナル仕事の流儀」虐待根絶へ医師の情熱
2019年01月 福井新聞 週間TVガイド

 

※著書、講演・口頭発表実績、メディア出演・掲載に関しては、一部を抜粋して掲載しております。
更なる詳細を知りたい方は、こちらをご覧ください。
https://researchmap.jp/read0172993

 

 

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